忍者ブログ
[5]  [6]  [7]  [8]  [9]  [10]  [11]  [12]  [13]  [14]  [15
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 国土交通省が発表した統計数字によると、1969年からの45年間で、国民の住宅資産から累計500兆円が消失したとされています。

 

 これは、500兆円相当の住宅が火災や地震で消滅したという意味ではなく、住宅としての「資産価値」が減少したということです。

 

 45年間で500兆円ですから、1年間では11兆円余りということです。年間の新築住宅投資額は15兆円前後ですから、国民が住宅ローンを組み、新築住宅を購入(投資)しても、国民経済全体としてみた場合は、その73%余りは消失(資産価値を失うという意味で)していることになります。

 

 個人の住宅購入(投資)としてみた場合は、住宅(建物のみ)を2,500万円で購入(投資)しても、その資産価値は毎年4%~5%減少し、20年~25年でゼロになるという計算になります。

 

 何か変ですね?

 

 この統計数字がマチガッテいるのでしょうか?それとも、わが国の「住宅政策」「住宅資産」のあり方に何か問題があるのでしょうか?

 

 答えは、その両方にあるようです。

 

 「住宅政策」の問題点としては、戦後の30年ぐらいは、住宅の絶対数が不足していたために、狭小・低品質の住宅が大量に新築されたということです。

 

 当然、住宅の耐用年数は、よくて20年程度のものだったといえます。

 

 そんな事情もあってか、大蔵省(現財務省)は、省令で「木造住宅の耐用年数は22年」と定め、現在もそのままです。

 

 この二つの事情があったためか、わが国の不動産仲介業界では、現在でも、木造住宅の価値・価格は築後20年~25年でゼロという「慣行」がまかり通っています。

 

 建設業界や不動産業界にとっては、住宅建設が増え、仕事が増えるのですから大歓迎なのはよーく分かります。

 

 政府や市・町・村にとっては、景気浮揚策にもなり、税収も増えるわけですから大歓迎です。

 

 次に住宅を資産としてとらえる視点からこの問題を考えてみます。

 

 戦後の低品質・大量生産の時代が過ぎ、防災・耐震基準も強化・整備された宮城県沖地震(1982年)後に新築された住宅は、法的にも技術的にも最低限の品質は保障されています。ところが、耐用年数が25年足らずという「不動産業界の常識」はそのまま残っているのが実情です。

 

 30年~40年前に建てられた住宅は、間取りや使用資材・断熱性・水回り等々に問題がないとはいえません。しかし、まだまだ、十分に使える住宅を資産価値ゼロとみるのは、家計や国経済にとっての大問題だけでなく、限られた資源の有効活用、環境問題としても大きな課題です。

 

 このことは、原発事故の被災地内の住宅の評価・損害賠償をめぐっても、大きな問題となっています。

 

 築後50年~70年経過しているものの、材料を吟味して建てた立派な農家住宅でまだまだ十分に使える住宅について、東京電力の「建物評価基準」では、ゼロに近い価格でしか賠償を払おうとしませんでした。

 

 原賠審の指導もあって、最近ようやく改善の方向に向かいつつありますが、東京電力の「評価基準」も、不動産業界の悪しき取引慣行に便乗したものと断ぜざるを得ません。

 

 いずれにせよ、住宅を25年程度で寿命がつきる消費財としてみる時代は終わったのであり、50年~70年は使える「資産」としてとらえ、生かす新しい「ビジネスモデル」がこれから世の中に現れてくることはまちがいありません。

PR

進化論を提唱したチャールズ・ダーウィンは「生き残るのは最強の種ではない。最も高い知能を有している種でもない。最も敏感に変化に反応する種である」という考えを示したといわれています。

 

ここで言う「種」とは種(タネ)という意味ではなく、生物学・博物学上の分類・種類をさす言葉です。

 

不動産鑑定士として、三つの会社「(株)高橋不動産鑑定事務所、(株)東北環境技術、(有)インターナショナル・コミュニケーションズ」の経営者として、ビジネスのありかた、企業の競争力、生き残り策・・・、について40年近く考え続けてきました。

 

ダーウィンの生き残りの条件についても、それなりに考えてきたつもりです。

 

今年に入って、世界経済はもとより、日本経済の先行きも、不透明感が増しています。もっとはっきり言えば、この先どうなるかが全く分からないということです。

 

分からない問題・課題に対応することの基本は、原理・原則・原点・古典に立ち戻って考えることです。

 

「山よりでっかい獅子は出ぬ」と腹を据えて対応するのも一つの策かもしれませんが、胆力だけで生き残れる時代ではないでしょう。

 

ダーウィン先生は、「変化に反応する」ことの重要性は説きましたが、では、どうすれば変化に反応できるかまでは教えてくれませんでした。

 

もちろん、企業経営の現場、ビジネス展開の現場レベルでどうすべきかなどは、考えも及ばなかったことは当然のことです。

 

「変化に反応する」ための出発点として、まず、何がどう変化するのかを見きわめることが重要です。つまり、変化の実情把握と変化の予測・予見です。

 

経営者にとって、真の仕事とは、企業・業種・業界の実態を知ることであり、周辺環境も含めた未来の予見です。

 

企業経営に限っていえば、自己が属する企業が、5年後、10年後、20年後に生き残るには、今、何をすればよいのかを考えるのが、リーダー、ビジネスマンのトップの仕事のはずです。

 

多くのビジネス書や経営学のテキストは、原理・原則を述べるだけで、せいぜい業界分析の手法までしか書いていません。

 

そんななかで、20年程前でしょうか、中前忠氏が書いた「三つの未来-衰退か再生か、日本のシナリオ」という著作に出会いました。ビジネス書ではないのですが、変化を予測・予見し、変化に対応する手法を「シナリオ・プランニング」という技法で解析・分析する画期的な本です。

 

一国の政治や経済の現状分析や未来予測に役立つだけでなく、企業・業界分析にも有効な分析手法であると理解し、その後の仕事に大いに役立ちました。

 

シナリオ・プランニングという手法を企業経営の未来予測・予見というレベルで応用するためには以下のような手順を踏むことになります。

 

<ステップ1> 企業・業界の将来を考える上での関心事、懸念されることの洗い出しと、現在の存立基盤について徹底分析する。

 

<ステップ2> 企業・業界を支えている複数の存立基盤がどう変化するかを予測し、三つの初期シナリオを作成する。

 

<ステップ3> 企業・業界の未来に作用する最も重要な力(ドライビングフォース)は何かを炙り出し、その変化を集中的に検討・研究する。

 

<ステップ4> ドライビングフォースを確定できない場合は、三つの初期シナリオを再三再四検討し、その時点での完成シナリオとして文章化し、不確定要素も文章化して残す。

 

言葉で表せば、この程度のことですが、実際に取り組めば、数百時間を集中的に投入する作業であり、経営者としての力量が試されるだけでなく、企業存続の絶対必要条件だということが理解できます。

 

10数年前になりますが、「不動産鑑定業界三つの未来」

http://www10.plala.or.jp/tika-infre/kanteimituno.html

「宅建業界三つの未来」(http://www10.plala.or.jp/tika-infre/takkengyokai.html

をまとめました。

 

今、読み返しても、役に立つものであり、あの頃、自分はよく頑張っていたなーと、楽しい思い出です。

 原発被災地内の建物評価について多くの相談を受けてきました。

 

東京電力の評価基準でも、ハウスメーカー等が建てた建物で、築10年以内の建物の賠償額は、不動産鑑定士の目からみても、それなりの水準であり、被災者の多くは、一応納得して、賠償金を受け取っているケースが多いわけです。

 

 ところが、建築資材(材料)を吟味し、地元の腕の良い大工さんや工務店に建てさせた坪単価90万円~120万円の「豪邸」の場合、東電基準では、新築時の坪単価が70万円~80万円程度にしかなりません。

 

 さらに、築後15年~25年経過しているようなケースでは、3.11の大震災でもビクともしなかった頑丈な100坪の「豪邸」でも、東電基準の評価額は3,000万円程度です。

 

 双葉郡や南相馬市小高区には、なぜか、「豪邸」が少なくありません。気候が温暖で、災害も少なかった地域という事情に加えて、自宅を建てる時は、孫子の代まで、つまり、100年は使える住宅を建築するという「気風」があったようです。

 

 さらに、普通の農家でも、1町歩程度の山林は、自家用材林あるいは薪炭林として所有することがあたりまえであったことも背景にあるのかもしれません。

 

 いずれにせよ、2~3年かけて木材を集め、吟味した材料を使って腕の良い大工さんを選んで建てた自宅に対する思いは、人一倍強いわけです。

 

 相談に来所される被災者の多くは、東北各地の銘木材を集め、ケヤキの大黒柱だけでなく、恵比須柱(二本目の大黒柱のこと)まで立てている方もいます。

 

 東電の賠償基準では、どうしても納得できないので、当所に評価を依頼した後、東京電力の「現地調査」を強く要請し、東電が依頼した補償コンサルが現地調査をしたケースもあります。

 

 東電側がADRに提出した「現地評価額算定書」を精査してみると、5段階に分けてある建物の等級区分を3等級(公庫住宅程度、耐用年数48年)を採用していることが判明しました。

 

 この現地調査には私も立ち会いましたが、「宮大工」の資格を持つ補償コンサルタントも含めて作成した算定書としてはあまりにもお粗末です。

 

 東電から「強要」されて、理不尽な価格を算定はしたが、プロが見れば、すぐに分かる仕掛けとして、3等級の数値を採用したのかもしれません。

 

 なお、原陪審(原子力損害賠償紛争審査会)の中間指針第二次追補では、

 

3)『「本件事故発生直前の価値」は、例えば居住用の建物にあっては同等の建物を取得できるような価格とすることに配慮する等、個別具体的な事情に応じて合理的に評価するものとする。』

とされており、さらに、同上第四次追補では、

『・・・、特に築年数の経過した住宅の事故前価値が減価償却により低い評価とならざるを得ないことを考慮し、公共用地取得の際の補償額(築48年の木造建築物であっても新築時 点相当の価値の5割程度を補償) を上回る水準で賠償されることが適当と考えられる。』

と明確に定めています。

 

これは、主に築後の経過年数の長い(結果として評価額が極めて低い)住宅について考え方を示したものですが、建築単価の高い住宅についても、公共用地取得の際の補償額が、基準となるべきことは当然のことであります。

 

 建物の賠償について、ADRに提訴したが、東電側は言を左右にして、公共用地補償基準による賠償をすんなりと認めようとしていません。

 

 原陪審から、基本的な方向づけは出されているのですから、東京電力も悪あがきせずに、被災者の生活再建、住宅再取得に協力すべき時だと、強く思います。

<< 前のページ 次のページ >>
アーカイブ
ブログ内検索
プロフィール
HN:
高橋雄三
性別:
男性
職業:
不動産鑑定士
自己紹介:

アクセス解析
忍者ブログ [PR]