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一年程前に、北海道の苫小牧市に住む長男から黒い肩掛けカバンが送られてきました。馬革のしっかりした作りです。
 
子供から贈り物が届くなどということは、めったにないことなので、大変嬉しかったのですが、どんな時に使うのかピンとこないまましばらく事務所に置いておきました。
 
半年程前から、知人に勧められて、マウンテンバイクに乗り始めました。休日で天気の良い日に、会社まで片道8キロの道を走ります。気分転換と健康維持に効果があるようです。
 
このマウンテンバイクに乗る時に肩掛けカバンが役に立つことが分かりました。北海道日高地方の伝統のある馬具製造業者が作ったカバンだけあって、使うほど、その良さが分かってきました。
 
カバンには忘れられない憶い出が二つほどあります。
 
一つは小学校入学時に父から届いたカバンです。陸軍軍属としてジャワ島スマラン市の鉄道部隊にいた父から「陸軍将校カバン」が送られてきました。
 
インターネットで調べたところ、「将校カバン」は小学生用のランドセルの原型だったようで、少し手を加えただけで立派な学童用ランドセルになりました。
 
昭和20年4月、敗戦直前の入学ですから、海上輸送事情の悪いなか、よく無事に日本まで届いたものだと思います。
 
物不足が極限に達していた時代にあって、子供の小学校入学前に、何としてもこのカバンを届けたいという親の思いが天に通じたのでしょうか。
 
小学校時代のクラス会に出ると、立派なランドセルを背負っていたな……などと今でも言われます。
 
二つ目の憶い出は、中学・高校時代の親友、三階徹君(http://www10.plala.or.jp/tika-infre/tuitou2.htm)から高校入学時に贈られたカバンです。
 
父親の祖国、韓国が「朝鮮動乱」で混乱するなか、母親の祖国、日本に帰国した三階君一家は、母親の故郷相馬に戻りました。
 
一家が帰国するに際し、医師だった父方の伯父から三階君に「はなむけ」として牛革のドクターバッグ(往診カバン)が贈られたようです。
 
日本でも、地方の開業医が往診の時に自転車の車体に二つ折りにして下げる立派なカバンでした。
 
経済的には、決して裕福とはいえなかった三階徹君が、「使ってくれ」と我が家に届けてくれました。「日本で勉学にはげめよ」という思いのこもったカバンを、私に使ってくれという三階君の気持ちをくんで、喜んで使わせてもらいました。
 
大学に進学した後も使っていたように記憶します。「勉強に励めよ!」という思いのこもったカバンを使ってはいましたが、その頃の自分は、あまり勉学には縁のない生活をしていました。
 
三階君は経済的には苦労しながら、大学院のドクターコースを修了し、中部地方のある大学で教授をしていましたが、5年ほど前に亡くなりました。
 
考えてみれば、その時代としては分不相応な立派な二つのカバンを使っていたことになります。
 
この二つのカバンを通して、少なからぬことを学びました。
 
一つは、本当に良いものは、使いこなし、使い続けることで、その本当の良さが分かるものだということです。
 
二つ目は、人にものを贈るという行為は、ものに託して、心の思いを送り届けることではないかということです。
 
私は、人に物を贈るという機会はめったにありませんが、贈るときは「心のこもったもの」をと心がけ、実行しているつもりです。
 
不動産仲介業をしていると色々な相談を受けることが多々あります。
 
時間をかけ、恵まれた自然環境の土地を求め、その地に、手間ヒマかけて建てた家、思いのこもった建物を、事情があって手放すような相談を受けるようなことも少なくありません。
 
既存住宅、中古住宅の中には、建て主・売り主のそんな思いのこもった秀れもの、良質な住宅も少なからずあります。
 
その思いと、建物と立地や環境の良さを分かってもらえる買主を探すこと。そんなお手伝いをすることも仲介業の仕事の一つだと自分に言い聞かせながら仕事をしています。
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プロフィール
HN:
高橋雄三
性別:
男性
職業:
不動産鑑定士
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