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近江商人の「三方よし」は企業経営の基盤・出発点として、今や世界の共通認識となっているようです。
2008年のダボス会議でビル・ゲイツは「創造的資本主義」についてスピーチをしました。
その内容は、「売り手よし」・「買い手よし」・「世間よし」、つまり、近江商人が唱えた「三方よし」そのものでした。
これを不動産仲介業に当てはめて考えるとどうなるでしょうか。
不動産の売買の場合、「売り手よし」「買い手よし」は両立するのでしょうか。
この問題を考える際、出発点は、売り主の利益・立場と買い主の利益・立場は「利益相反」であり、大きく違うということです。
この立場・利益の違う売り主と買い主の双方の代理人(仲介人)としての役目を果たす仲介業者は「神様」みたいな、公正・無私な役割を期待されるわけです。
生身の仲介業者に「神様」の役割を期待することは、出発点からして危なっかしい話です。
米国では、大部分の州で禁じられている双方代理・双方仲介が、なぜか、わが国では堂々とまかり通っています。
「大手仲介業者」は言うに及ばず、地元有力仲介業者も双方代理・両手数料仲介を目ざしていることは、残念ながら現実です。
不動産仲介業者の分かりにくさ、不透明感の大部分は、これが原因だと言っても過言ではありません。世間から不信感をもたれる原因の一つはここにあるわけです。
つまり、「三方よし」ではなく、「三方悪し」の典型的な「商法」と言わざるをえません。
売り手にとって不利益になる事情を説明します。
「某大手仲介業者」が売り主から物件の売却を依頼されたとします。この業者は、自社のお客様だけにこの物件情報を伝えます。
売却依頼を受けてから1週間たっても決まらなければ、レインズ(仲介業者の情報共有システム)に登録する義務が生じます。
レインズで見た他の仲介業者から問い合わせが入ったとします。答えは決まっています。その物件は「商談中です」という答えです。
ところが、同じ物件についてお客様が直接問い合わせをすると、「すぐにでも案内します・・・、ぜひご来店下さい」となるわけです。
この場合、売り手は、他の仲介業者の力・ネットワークも活用して、なるべく早く、なるべく高く売却するという「機会」・「利益」を失うことになります。
買い手は、物件の良し悪しや、価格の妥当性について、味方になってくれる仲介業者の力を利用する「機会」を失います。売り主側の仲介業者が買い主立場や利益を考えるとは考えられないからです。
双方代理・双方仲介は、売り主にとっても買い手にとっても、何ら利益のないことであり、双方仲介をする業者だけが手数料が倍になるオイシイ話になるわけです。
「世間よし」を我田引水に強引に解釈して、仲介業者も「世間の一員」だと言い張ってみても、世の中では通用しません。
これからは、中古住宅の流通が大きく伸びる時代になりそうです。
不動産仲介業者も、本当の意味で「世間よし」と世の中から認められる存在にならなければ、生き残れない時代になったのではないでしょうか。