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原発被災地内の建物評価について多くの相談を受けてきました。
東京電力の評価基準でも、ハウスメーカー等が建てた建物で、築10年以内の建物の賠償額は、不動産鑑定士の目からみても、それなりの水準であり、被災者の多くは、一応納得して、賠償金を受け取っているケースが多いわけです。
ところが、建築資材(材料)を吟味し、地元の腕の良い大工さんや工務店に建てさせた坪単価90万円~120万円の「豪邸」の場合、東電基準では、新築時の坪単価が70万円~80万円程度にしかなりません。
さらに、築後15年~25年経過しているようなケースでは、3.11の大震災でもビクともしなかった頑丈な100坪の「豪邸」でも、東電基準の評価額は3,000万円程度です。
双葉郡や南相馬市小高区には、なぜか、「豪邸」が少なくありません。気候が温暖で、災害も少なかった地域という事情に加えて、自宅を建てる時は、孫子の代まで、つまり、100年は使える住宅を建築するという「気風」があったようです。
さらに、普通の農家でも、1町歩程度の山林は、自家用材林あるいは薪炭林として所有することがあたりまえであったことも背景にあるのかもしれません。
いずれにせよ、2~3年かけて木材を集め、吟味した材料を使って腕の良い大工さんを選んで建てた自宅に対する思いは、人一倍強いわけです。
相談に来所される被災者の多くは、東北各地の銘木材を集め、ケヤキの大黒柱だけでなく、恵比須柱(二本目の大黒柱のこと)まで立てている方もいます。
東電の賠償基準では、どうしても納得できないので、当所に評価を依頼した後、東京電力の「現地調査」を強く要請し、東電が依頼した補償コンサルが現地調査をしたケースもあります。
東電側がADRに提出した「現地評価額算定書」を精査してみると、5段階に分けてある建物の等級区分を3等級(公庫住宅程度、耐用年数48年)を採用していることが判明しました。
この現地調査には私も立ち会いましたが、「宮大工」の資格を持つ補償コンサルタントも含めて作成した算定書としてはあまりにもお粗末です。
東電から「強要」されて、理不尽な価格を算定はしたが、プロが見れば、すぐに分かる仕掛けとして、3等級の数値を採用したのかもしれません。
なお、原陪審(原子力損害賠償紛争審査会)の中間指針第二次追補では、
3)『「本件事故発生直前の価値」は、例えば居住用の建物にあっては同等の建物を取得できるような価格とすることに配慮する等、個別具体的な事情に応じて合理的に評価するものとする。』
とされており、さらに、同上第四次追補では、
『・・・、特に築年数の経過した住宅の事故前価値が減価償却により低い評価とならざるを得ないことを考慮し、公共用地取得の際の補償額(築48年の木造建築物であっても新築時 点相当の価値の5割程度を補償) を上回る水準で賠償されることが適当と考えられる。』
と明確に定めています。
これは、主に築後の経過年数の長い(結果として評価額が極めて低い)住宅について考え方を示したものですが、建築単価の高い住宅についても、公共用地取得の際の補償額が、基準となるべきことは当然のことであります。
建物の賠償について、ADRに提訴したが、東電側は言を左右にして、公共用地補償基準による賠償をすんなりと認めようとしていません。
原陪審から、基本的な方向づけは出されているのですから、東京電力も悪あがきせずに、被災者の生活再建、住宅再取得に協力すべき時だと、強く思います。