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国土交通省が発表した統計数字によると、1969年からの45年間で、国民の住宅資産から累計500兆円が消失したとされています。
これは、500兆円相当の住宅が火災や地震で消滅したという意味ではなく、住宅としての「資産価値」が減少したということです。
45年間で500兆円ですから、1年間では11兆円余りということです。年間の新築住宅投資額は15兆円前後ですから、国民が住宅ローンを組み、新築住宅を購入(投資)しても、国民経済全体としてみた場合は、その73%余りは消失(資産価値を失うという意味で)していることになります。
個人の住宅購入(投資)としてみた場合は、住宅(建物のみ)を2,500万円で購入(投資)しても、その資産価値は毎年4%~5%減少し、20年~25年でゼロになるという計算になります。
何か変ですね?
この統計数字がマチガッテいるのでしょうか?それとも、わが国の「住宅政策」「住宅資産」のあり方に何か問題があるのでしょうか?
答えは、その両方にあるようです。
「住宅政策」の問題点としては、戦後の30年ぐらいは、住宅の絶対数が不足していたために、狭小・低品質の住宅が大量に新築されたということです。
当然、住宅の耐用年数は、よくて20年程度のものだったといえます。
そんな事情もあってか、大蔵省(現財務省)は、省令で「木造住宅の耐用年数は22年」と定め、現在もそのままです。
この二つの事情があったためか、わが国の不動産仲介業界では、現在でも、木造住宅の価値・価格は築後20年~25年でゼロという「慣行」がまかり通っています。
建設業界や不動産業界にとっては、住宅建設が増え、仕事が増えるのですから大歓迎なのはよーく分かります。
政府や市・町・村にとっては、景気浮揚策にもなり、税収も増えるわけですから大歓迎です。
次に住宅を資産としてとらえる視点からこの問題を考えてみます。
戦後の低品質・大量生産の時代が過ぎ、防災・耐震基準も強化・整備された宮城県沖地震(1982年)後に新築された住宅は、法的にも技術的にも最低限の品質は保障されています。ところが、耐用年数が25年足らずという「不動産業界の常識」はそのまま残っているのが実情です。
30年~40年前に建てられた住宅は、間取りや使用資材・断熱性・水回り等々に問題がないとはいえません。しかし、まだまだ、十分に使える住宅を資産価値ゼロとみるのは、家計や国経済にとっての大問題だけでなく、限られた資源の有効活用、環境問題としても大きな課題です。
このことは、原発事故の被災地内の住宅の評価・損害賠償をめぐっても、大きな問題となっています。
築後50年~70年経過しているものの、材料を吟味して建てた立派な農家住宅でまだまだ十分に使える住宅について、東京電力の「建物評価基準」では、ゼロに近い価格でしか賠償を払おうとしませんでした。
原賠審の指導もあって、最近ようやく改善の方向に向かいつつありますが、東京電力の「評価基準」も、不動産業界の悪しき取引慣行に便乗したものと断ぜざるを得ません。
いずれにせよ、住宅を25年程度で寿命がつきる消費財としてみる時代は終わったのであり、50年~70年は使える「資産」としてとらえ、生かす新しい「ビジネスモデル」がこれから世の中に現れてくることはまちがいありません。