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市町村合併で南相馬市小高区となった旧小高町内の中古物件の売却依頼を受けました。東京都調布市に住むYさんからです。
旧小高町で今年の2月まで1人暮らししていた87才の伯母さんが転倒して軽いケガをしたのを機会に、湘南の老健施設に入ることになったとのことでした。近くに住む75才の妹さんが毎日のように訪ねてくれるので、本人は今の生活に大変満足しているとのことです。ただ一つ気がかりなことは、住む人の無くなった小高の家のことだということで、Yさんが売却について調査、準備を役割分担したということのようです。
Yさんは、まずインターネットで南相馬市の不動産業者を調べたそうです。その結果、小高区には仲介業者が1社もないことが分かったそうです。正確には1社あったのですが、昨年廃業したとのことです。調べる範囲を福島県内まで広げたところ当社のホームページが目にとまり、不動産鑑定事務所も兼業しているなら、売却価格の査定も適正にしてくれそうだということで、電話がありました。4月初旬のことです。
その後、現地立ち会い確認を済ませ、カギをお預かりしました。電話で3~4回連絡しあっていたとはいえ、初対面の私どもを全面的に信頼しカギを預けてくれたことで、この信頼に応えなくてはという気持ちが一段と強まりました。1週間後に価格査定書を郵送し、売却価格が決まり専任媒介契約も結びました。
当社が考えた売却の手順としては、①「売物件」看板を付ける。②旧小高町内で新聞折込チラシを全戸配布する。③物件の周辺地域に広告チラシ2,000部を戸別配布(ポスティング)する。④レインズに登録し、南相馬市内の仲介業者2~3社に買い客の紹介を依頼するという順序でした。
普通であれば、この順序で仕事を進めても早くて2ヶ月、通常は3~6ヶ月、長い場合は2年もかかるのが、今の不動産市場の実状です。ところが、この物件の場合、現地に「売物件」の看板を付けた次の日に電話が1件あり、3日間で4件の問い合わせがありました。5日後に2人のお客様をご案内し、建物内部も見ていただきました。最初に電話をいただいたお客様をまずご案内したわけですが、建物内部を見てその場で即決されました。「不動産購入申込書」(業界用語で買付証明といいます)を書いてもらったので、1時間後にご案内したもう1人のお客様には事情をお話しして、何らかの事情で先客がキャンセルになった場合は、優先してご連絡しますということでご了解をいただきました。
私どもは、看板を撤去して福島に戻りました。その日の午後、看板撤去後にもう1件の問い合わせの電話があり、計5人の買い希望客があったことになります。
 
私どもは、今回の物件売却のことから多くのことを学びました。
 
①旧小高町には、売物件、特に中古住宅の売物件が少なく、人通りの少ない住宅街に看板1枚掲げただけで、問い合わせが集中する今どきめずらしい特別な地域であること。
 
②多くの問い合わせをいただいた場合、お客様を案内する順番が非常に大事であること。幸い今回の場合、最初に問い合わせをいただいたお客様を最初に案内し、即決となったので「結果オーライ」だったのですが、案内のルールの明文化・明確化を痛感しました。
 
この業界では架空の競争相手を持ち出して早期の決断を迫る「あおり行為」ということが今でも、一部では行われているといわれています。わが社では当初から、お客様が冷静な判断ができるように十分な時間をかけて物件を案内し、順序を追って説明した上で、次のステップに進むというやり方を貫いてきたつもりでした。今回の場合、短期間に問い合わせを多くいただいたために「問い合わせ順位」と「現地案内の順序」、加えて「他にも案内予定のお客様がいること」についての伝達に迷いと混乱が部分的に生じました。結果として3番目に案内する予定だったお客様には大変ご迷惑をおかけすることになりました。お子様が外から建物を見て大変気に入られ、ぜひ購入したい物件だっただけに非常に残念がられていました。
人間社会の縁談であれば、お互いに相手を選ぶ権利があるわけですし、お断りすることもできるわけですから、同時に多くの話が持ち込まれても特に困ることはない(?)のかもしれません。
不動産取引をめぐる商談の場合、金銭的な利害がムキ出しになるためか、思惑やかけ引きが強く係わってしまい、間に入った仲介業者はふり廻されて神経をすり減らすケースも少なくありません。
「娘1人に縁談5件」などと喜んでばかりはいられないことを学ばされた今回の一件でした。
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あまり知られていないことですが、不動産業界、特に中小の仲介業者の世界は競争と協調・協力というルール、慣習が支配する世界です。一見矛盾するかに見える競争と協調というルールが結果として業界の近代化、活性化に役立っていることが開業3年目にしてようやく分かりかけてきました。
身近な例でいうとこんなことになります。売買仲介業者は、市内の売物件を一件でも多く獲得(売主・売物件を発掘し専任媒介契約を結ぶこと)するために知恵をしぼり、工夫を重ねて日夜努力しています。仲介業者どうしの競争関係という側面です。
かつては、売主様・地主様宅に日参し、宅地開発の同意書をもらい、開発・造成計画書を作成してハウス・メーカーに持ち込めば売買仲介業が成り立ったよき時代もあったと聞いています。今はそんな時代ではありません。売主およびその予備軍である一般の市民は仲介業者の日頃の仕事ぶりをよーく見ているといわれています。広告チラシ、業者の広告看板、インターネット経由のホームページ閲覧、口コミ等で業者の仕事ぶり、人柄、信用度をくりかえしチェックして、納得してようやく行動を起こすといわれています。
業者間の物件獲得競争は、実は信用獲得競争だと最近つくづく思うようになりました。お客さまの信用・信頼を得るために仲介業者どうしが公明正大に大いに競争すること、これは業界の活性化のためにも、不動産流通業界の近代化のためにも、世の中のためにも大いに役に立つことではないでしょうか。わが社も「適正な価格査定」の作成を最大の武器にしてこの競争に参加を続けるつもりです。
次に協調・協力関係という側面です。売買仲介業者は、持主・売主様から物件の売却依頼(専任媒介契約)を受けた場合、レインズ(国土交通省の指導の下に作られた不動産流通機構の物件登録システム)に物件情報を登録し、広く一般の仲介業者に公開して、物件の適正かつ早期売却に努めることを義務付けられています。
かつてのように、売物件の情報を一社あるいは仲間うちの数社で独り占めにして、買い客の現れるのをじっと待つという営業スタイルは原則としてなくなったとされています。
インターネット・ホームページによる物件情報の公開が日に日に進んでいる現在、物件情報を抱え込んでじっと来客を待つという営業方針の会社が、お客様の支持を得るとは考えられません。お客様の支持と信頼が得られるのは、第一に、より多くの物件情報をより速く、より詳細にお届けできる仲介業者だと信じています。
第二は、お客様の物件選びに始まって、資金計画、建築・リフォーム計画、取得時期選定など様々な悩みや困りごとに対してしっかりとサポートできる仲介業者でなければ信頼を得るのは難しいのではないでしょうか。
第三は、お客様にとって一生に一度の高額な買い物をするわけですから、価格の適正さ、物件の品質保証、取引の安全保障について十分な知識と経験に基づいてお客様のお役に立てる会社でなければ、お客様の支持は得られないのではないでしょうか。
物件情報は、広く業者間では公開され、どの仲介業者からでも情報入手は可能な時代になっています。業者間の情報の共有化・公開化は普及し、その意味では、業界の協調・協力体制は整備されているといえます。残された課題は、共有化された物件情報を基にして、物件を求めているお客様に対してどれだけお役に立てる会社に変身できるか、会社の体質改善、ひいては業界の体質改善が求められているのではないでしょうか。
不動産鑑定士という仕事は、個人や会社の所有する土地や建物を客観的な目で、つまり第三者の立場で鑑定(目きき)評価(値ぶみ)するものだといわれています。
私がこの業界に入りたてのころ、(財)日本不動産研究所仙台支所で修業していた頃のことです。日頃は、当然のこととして第三者の立場で仕事をしていましたので特に何も感じなかったのですが、中学以来の親友であるS君の母親が所有する仙台市郊外の土地を買い取って欲しいと頼まれた時は、第三者の立場、客観的な目で物を見るということの難しさをつくづく思い知らされました。
兄弟以上に近い存在であったS君の母親が、将来を夢見て購入した60坪程の土地。しかも、河川改修工事のために約30坪が買収され残り30坪の小画地になった上に、市街化調整区域(原則として建築不可)となってしまった土地でした。近くを名取川が流れ自然環境は良いのですが交通の便が悪く、近くには農家住宅が点在する辺鄙なところでした。唯一の長所・利点は、仙台市が計画していた地下鉄「南北線」終点の「予定駅」に近いことです。友人の立場に立てば、なるべく高い値段を付けてやりたい。しかし、借金の工面をして買う自分の立場からすれば、将来性も十分に見込んだ上での適正な価格で買うしかない。こんな相反する思いで悩んだことがなつかしさと共に思い出されます。
幸い、職場の同僚は皆鑑定のプロであったので、折りを見て意見を聞きました。建築不可の市街化調整区域、しかも30坪という狭小地。地下鉄の予定駅に近いといっても電車が動くまでは早くて10年、その後区画整理事業が立案・事業決定・造成に10年以上を要するとみれば、値段の付けようがないというのが大方の意見でした。結局、プロ集団の意見はあまり役に立たず、その土地の固定資産税評価額の2倍の値段(150万円)で買うことに決めました。幸い10年後に地下鉄は開通し、その15年後には区画整理事業も完成して、減歩(区画整理事業で道路・公園等にするための地積減少)の結果、約25坪の立派な(?)宅地に生まれ変わりました。
土地購入から25年を経てようやく役に立つ「物件」に変身したわけです。その後、わけあってその土地は手放し、福島市内の身近なところに中古のアパート(2K×6)を買い、収益物件の管理の難しさや収支の実態を実地で勉強しています。
これらの一連の取引について当事者として関わった経験は、不動産鑑定士としても、売買仲介部門の立ち上げの際にも大いに役に立つ知識やノウハウを教えてくれるものでした。その一つは、取引の当事者はどうしても心の冷静さを失いがちで、物事、いや「物件」を客観的に見ることができなくなるということです。
日頃から、不動産を第三者の立場で客観的に見ることに慣れているはずの私ですら判断に迷うわけですから、一生に一度の大きな買い物あるいは「売り物」をする立場に立たされた普通の人が大いに悩み、迷うのはある意味では当然のことでしょう。このへんのところに不動産鑑定業と不動産仲介業を兼務しているわが社の存在意義があるのかなぁ・・・などと勝手に解釈しています。
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プロフィール
HN:
高橋雄三
性別:
男性
職業:
不動産鑑定士
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