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両手禁止という言葉を聞いて、すぐにピンとくる人は、かなり不動産業界に通じた人です。
「両手」つまり同じ業者が売り手と買い手の「両」方から「手」数料を取る仲介業務を禁止するという意味です。
民主党が先ほど発表したマニュフェストの基になっている民主党政策集「INDEX2009」に、「一つの業者が売り手と買い手の両方から手数料を取る両手取引を原則禁止します」と明記されています。
発表されたマニュフェストそのものに書かれているのではなく、マニュフェストの基になっている政策集(50ページ近い省庁別の政策詳細)に明記されたものです。
マニュフェストそのものに書かれたものでないので、世間一般ではあまり話題になっていませんが、不動産業界にとっては大きな問題です。
株式マーケットはすぐに反応しました。
7月27日(月)の東京市場で住友不動産販売と東急リバブルの株価が10%近く下げました。制限幅いっぱいの値下げです。
この両社に限らず、不動産仲介の世界で大手といわれる業者は、大手としての「信用」をバックに売主から売却依頼を受けると、その物件情報を世間一般に公開せず、買い主も自社グループ内で決めようとする(両手数料)傾向が強いことは「業界の常識」です。
売り主から売却の依頼(正確には専任媒介契約)を受けた仲介業者は2週間以内に、その物件情報を公開(不動産流通機構に登録)することが義務づけられています。
ところが、この規定は実際上は守られていないことが多いようです。自社物件(直接売却依頼を受けたもの)は、なるべく自社で買い主を探し出し、両方から手数料を受取れるようにしたいのは、商売としては、ある意味で当然ですし、よく分かります。
しかし、売主の立場に立って考えた時はどうでしょうか。こっそりと内密にして売却したいという事情のある売り主は別として、より高く、より早く売却したい場合は、その物件情報を広く早く、業者・業界に伝達し、インターネット上も公開することが売り主側の利益、立場になることは明白です。
買い主の立場からはどうでしょうか。
買い主にとって「住宅取得」の第一歩は、広く物件情報を収集し、比較検討することです。
その第一歩の段階で、かなりの物件情報が特定の業者に「囲い込まれている」としたら、それは問題です。希望条件に合致する、又はそれに近い物件情報を広く、深く検討することが大切であるのに、それを保証するシステムが守られていないわけです。
仲介の「両手禁止」は業界の悪しき習慣、不透明感を一掃する大きなインパクトを持つことになりそうです。
両手禁止にはもう一つの大きな意味があります。それは、法律の世界、弁護士の世界では、常識・大原則となっている「双方代理」の禁止と関連することです。
不動産仲介は「媒介・仲介」という立場であり、「代理」ではないという理由づけで、「両手仲介」を正当化する考え方もあります。
しかし、売り主と買い主では、その立場は全く違うのであり、価格の面ではその利害は対立したものです。
この「利益相反」の取引という現実・実態に対して、立場をあいまいにして「仲介」するということは業界の不透明感・不信感を増長する大きな原因となっていると言ってはいいすぎでしょうか。
民主党の「INDEX2009」をきっかけにして、民主党政権(?)下で大いに議論が盛り上がることを期待します。
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