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不動産市場といっても間口が広すぎるので、中古住宅の流通(売買)に絞って考えてみます。まず第一に、中古住宅に本来の意味でのマーケットがあるのかという問題があります。中古品の売買は昔からある商売ですが、価格の高い順から並べると、住宅、車、美術品、古道具、衣料品、古書などがあげられます。住宅以外は確立されたマーケットがあり、流通システムも整備されています。ところが、中古住宅には本当の意味でのマーケットはありません。あるのは個別の売買だけです。その理由としては、中古住宅は個別性が強く、地域性も強いことに加えて、物件そのものも市場に「出品」できないからです。現物を出品・展示できなければ、本来の意味での市場は成り立ちません。不動産のオークション市場と称してインターネットを活用して物件情報をオープンにし、買い希望者に購入予約権を認める方式が試みられています。これもまだ試行錯誤の段階であり、内 実は情報をオープンにし、競争原理を取り入れた個別取引です。そういえば、中古航空機、船舶中古機械・設備の売買という分野がありますが、これは限定されたマーケットであり、プロ同士の個別取引の世界です。
そこで本題の中古住宅の「流通市場」に戻って考えてみます。第一に中古住宅は個別性が強いということの内容です。これも二つに分けて考えることができます。一つは土地の環境、自然条件、利便性や快適性に関わる交通接近条件、道路条件などなどを含む土地の地域性、個別性の問題です。二つ目は建物そのものの個別性です。あたりまえのことですが、地球上に同じ建物は二つとないといわれます。建てた時期、場所、使用資材、施工した人、利用目的、間取り、設計思想、メンテナンス総べて違います。中古車市場では、今や新車の販売台数を上回って取引されていますが、それには車種、メーカー、年式、メンテナンス、性能保証等々のシステムが整備されており、価格もマーケットで合理的に決められているからだといわれています。
米国の住宅市場はどうなっているのでしょうか。ハワイのコンドミニアム(マンション)を現地視察した以外、米本土の住宅市場の現地は見たことがありませんが、文献やインターネットを通じて一定の知識は得ていますし、関心はもちつづけています。サブプライムローン問題が表面化してから、「For Sale」のカンバンの付いた売家の画像を日本のテレビでもよく見るようになりました。テレビの画面からも分かることですが、米国の住宅は外観も規格化されているし、間取りも売り易いように標準化されているようです。アメリカ人は世代や家族構成で家を住み替えるのがあたりまえになっているので、中古住宅の流通は年間400万~500万件と数も多く、流通の各段階で関係する専門家の種類も数も多いようです。住宅の品質・性能をチェックする「ハウスインスペクター」(品質検査員)、安全な取引を保障する「エスクロー制度」、売主の代理人である「セーラーズエージェント」、買い主の代理人である「バイヤーズエージェント」等に分かれて役割分担をしています。このように役割分担が明確になされた上で、建物そのものが住み替え(何年後かにはより高い価格で売り出す)を前提に間取りを決め、価格が下がらないように日曜ペインター、日曜大工の腕を発揮している。このことが米国の中古住宅流通の最大の特徴であり、「住宅マーケット」を活発化させてきた最大の理由です。その住宅価格が年率8%~10%も下りだしたことがサブプライムローン問題の根底にあるわけです。
(次回は中古住宅のチェックポイントについてとりあげます)
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高橋雄三
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不動産鑑定士
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