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日本では耳慣れない言葉ですが「リバースモゲージ」という金融制度があります。高齢者が自宅を担保に入れて金融機関から生活資金や老後資金を借り入れ、本人は自宅にそのまま住み続けて天寿を全うした後は、その担保物件を売却して借入金を返済する契約・金融制度です。フランスでは広く普及しているといわれていますが、わが国では武蔵野市が保証を付ける型でM信託銀行が実施している程度で、あまり普及していません。武蔵野市のケースも地価下落で融資限度額が下がってしまい、実質的には機能していないようです。
このリバースモゲージの「福島版」ともいえる案件が今、わが社に持ちこまれています。「福島版」を考えだしたのは、中心部に近い○地区に住む92才の元公務員のJさんです。138坪の高台の土地に40坪の木造平家建てで、バリアフリーのリフォーム済の家に38年住んでいる方です。総檜造りで手入れもよくされており、あと50年は十分に住める建物です。90才の奥さまもお元気で、共済年金も充分にあり、現在の生活には余裕があります。去年の9月にJさんが62才の長女Iさんと一緒にわが社を訪ねてこられ、土地・建物(自宅)の価格査定と売却について相談を受けました。不動産鑑定士としての査定額は1,590万円(土地1,380万、建物210万)と後日回答いたしましたが、実は……、ということになりました。自分達夫婦は90才を過ぎているのであと5年ぐらいの余命だと思っている。どんなに長くても10年でしょう。この土地・建物を誰かに買ってもらい、その人に家賃5万円を払って住み続ける条件だとすると妥当な売却額はいくらと査定するかとの質問でした。売買契約と同時に5年更新の賃貸借契約を結び、5年分の前家賃300万(5万×60ヶ月)を契約時に支払うという条件が付いた場合、売買価格はいくらとすればよいかという相談です。売却の目的は、夫婦の葬儀費用(250万×2人)を確保しておきたいということでした。どんな人が買い主となるかも含めて4~5日考えた末の結論は、売買価格は900万円、買い主の実質支払額は600万円(前家賃300万円を差し引く)という結論を伝えたところ、Jさんにも娘さんにも納得していただけました。ただし、この売買は対外的には非公開にして欲しいという強い要望がありました。自分達が住み続けるのですからなおさらなことです。
幸い、わが社には400人近い市内で物件を求めている人が登録されていますので、この土地・建物を「収益物件」として近くに住むHさんにご紹介しました。Hさんは600万で5年後から年間60万円の家賃収入が見込める「収益物件」としてまず考え、次に高台に建つ総檜造りのバリアフリーの家として、将来自分達が住んでも良いと考えたようです。年末には契約寸前まで進んだのですが、株式市場が大幅に下げ、FX取引でも損失が出たために契約寸前で延期となってしまいました。為替の先物取引であるFX取引は円が1ドル125円ぐらいまでにならないとHさんの資金力は回復しません。他に買い希望の人がいれば、話を進めてもらって結構ですということになりました。
円が125円まで安くなることを願いつつ、皆様方の中でこの物件に関心がある方がいればと思い、物件のご紹介をいたしました。意のあるところをくみ取っていただければ幸いです。
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高橋雄三
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