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10年程前に、不動産の売買仲介業の現状と問題点について本格的に調べたことがあります。
買い物をする際に、商品の説明をしてくれたり、代金の支払いの手伝い、場合によって値段を下げる交渉をしてくれたりする店員(不動産の場合は仲介業者)に料金(仲介手数料)を支払うというシステムがよく理解できなかったことが動機の一つでした。
宅建協会伊達支部の新年会に招かれ、不動産仲介業の未来像についてのセミナーを依頼されたことも契機でした。
丁度、インターネットが本格的に普及しはじめた時期でもあり、「インターネットは中間業者の地位を脅かす」のではないかという議論が盛り上がっていました。
ビジネスでの利用という側面からインターネットを定義づけると、中継機能の排除、つまり中継機能・仲介機能にとってかわる存在だと強調されていました。
B(ビジネス)to Bとしての中間流通業者は排除され、存立基盤を失うとまで言われたものです。
不動産仲介業は、典型的な中間流通業です。しかし、B to Bではなく、大部分がC(コンシューマー)to Cのビジネスです。
家や土地を売りたい人は、インターネット上に売り物件の情報を発信すればよい。買いたい人はインターネットでその情報を探し出し、直接、当事者どうしで交渉をすれば、仲介業者など不要だし、手数料もかからないといった議論でした。
その後の10年間の推移を振り返ってみると、仲介業界もお客さまも、大きく変わった面と基本的に変わらない面があります。
インターネットの利用という点では大きく変わりました。
まず、仲介業者の大部分はインターネット・ホームページで物件情報をお客さまに知らせる方式を採用するようになりました。広告チラシの配布は情報量も少なく、経費的にも無理だからです。
お客さまも、インターネットを利用すれば、自分の希望する地域、種別、価格の物件情報をいくらでも入手できるようになりました。
しかも、物件情報だけでなく、その会社のホームページをよくチェックすれば、会社の営業姿勢、経営者の理念、営業マンの人柄まで分かるようになったのです。
10年前の予測よりも、機能としても内容としても大きく進んでいます。
しかし、変わらなかったこともあります。
インターネットがこれだけ普及しても、仲介業者の役割が不要になったり、減少しなかったことです。
でも、その中味、仲介業者の役割は大きく変わりました。
物件情報の発信機能は相対的にその役割が低下し、代わって、お客さまの取引の安全・安心をサポートする会社がここにありますよという「信頼醸成」機能が重要になったということです。
お客さまの立場になって考えてみればすぐに分かることですが、一生に一度か二度の高額の買い物をするのですから、物件の選択と同じように、信頼できる会社選び・営業マン選びは大切なことです。
インターネットの普及は仲介業者の役割を低下させ、排除するのではなく、むしろ、その役割の重要性を浮かび上がらせたといえるのではないでしょうか。
賃貸仲介大手の○○ブルが「オトリ広告」の掲載で、公正取引委員会から排除命令を受けたのは2年前のことでした。
「オトリ広告」とは、存在していない物件や既に成約済みとなっている物件を、チラシ広告やホームページに載せることをさす業界用語です。
「超優良物件」のような装いで広告をして、お客さまの問い合わせや来店を誘い、問い合わせをすると、“もう決まりました”といいながら、別の物件を紹介するという古典的な手口です。
こんな幼稚な手法は、仲介業者の大部分が、とっくの昔に卒業したものと思っていましたが、私の思い違いだということが最近分かりました。
○○ブルは賃貸仲介専業の大手ですが、売買仲介大手といわれる業者も、ホームページ上に「オトリ広告」を載せるのは「常識」という内部告発的ブログを偶然見つけました。
不動産鑑定士の資格を持ち、野村不動産、外資系不動産会社を経て、現在PM(プロパティ・マネジメント)会社を経営する倉元孝弘氏の「参宮橋にて思う」というコラムです。
倉元氏のコラムによると「投資用不動産の買主はインターネットで来る人が全体の6割程度。現在のネットの使われ方は“オトリ物件”で集客して、その上で別の物件を買わせるやり方」
「現在の購入者はネット経由で来る方がほとんど。すると、仲介業者にとってはネットに『オトリ広告』を載せて、引っかかってきたお客さんで決める。どうやって集客するのかを考えず、ただ単にネットうけする物件を集める」…とあります。
たしかに、魅力的に見える「オトリ広告」をホームページに載せれば、問い合わせや来店は増えるでしょう。
しかし、問い合わせの電話で応答する社員や来店したお客さまに応接する社員の気持ちはどうなんでしょう。
「その物件は、ちょっと前に決まりました」「他に似た条件の物件がありますのでご紹介します」などと、空々しいウソをつかされる社員の気持ちを考えた時、こんな手法が内部的にも長続きするはずもありません。
いくら「決まってナンボ」の業界とはいえ、社員が胸を張ってお金を受け取れるようなビジネススタイルでなければ、世間で通用するはずがないと思うのは、まだまだ私が「甘ちゃん」だからでしょうか。
ホームページに質・量・鮮度の三拍子のそろった物件情報を掲載すること。誠実にお客さまと向き合う会社であり、社員であることを「愚直」に発信し続け、実際の応接もその姿勢を貫くこと。
こんな、世間一般ではあたりまえのことを守っていけば、この業界もいつの日か、世間様から一定の評価をいただける業界になると信じて、今年の後半もがんばりぬきます。