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同じ仲介業者が売り手と買い手の両方から仲介手数料を受け取る、いわゆる「両手」仲介の問題点について、2度ほどコラムに書きました。
両方から手数料を取ることを禁止するとなった場合のメリット、デメリットについて、売り主の立場、買い主の立場、仲介業者の立場、業界のあるべき姿という点から、論点を整理してみました。
①(こっそりと内密にして売却したいという事情のある売り主は別として)より高く、より早く売却したい場合は、その物件情報を広く早く、業者・業界に伝達し、インターネット上も公開することが売り主の利益、立場になることは明白です。
②買い主にとって「住宅取得」の第一歩は、広く物件情報を収集し、比較検討することです。
その第一歩の段階で、かなりの物件情報が特定の業者に「囲い込まれている」としたら、それは問題です。希望条件に合致する、又はそれに近い物件情報を広く、深く検討することが大切であるのに、それを保証するシステムが守られていないわけです。
③不動産仲介業界の大手といわれる、住友不動産販売(株)と東急リバブル(株)の株価は、民主党が両手禁止の政策を発表した直後の7月末に10%近く下げ、民主党の圧勝が伝えられた8月末からさらに5%程下げています。
(会社の)お客さまにとって良い結果をもたらす施策が実行されようとしている時に、株価が15%も下がる会社って何なんでしょうか。
④言うまでもないことですが、仲介業者、仲介業界は、住宅・不動産の円滑・適正・安全な流通・取引を実現することに社会的使命があるわけです。
仲介の「両手禁止」は業界の悪しき習慣、不透明感を一掃する大きなインパクトを持つことになりそうです。
⑤法律の世界、弁護士の世界では、「双方代理」の禁止は、常識・大原則となっています。
不動産仲介は「媒介・仲介」という立場であり、「代理」ではないという理由づけで、「両手仲介」を正当化する考え方もあります。
しかし、売り主と買い主では、その立場は全く違うのであり、価格の面ではその利害は対立したものです。
この「利益相反」の取引という現実・実態に対して、立場をあいまいにして「仲介」するということは業界の不透明感・不信感を増長する大きな原因となっているといえます。
「両手禁止」は仲介業界だけでなく、世間一般でも話題になりつつあります。先週号の「日経ビジネス」でも記事に載っていました。
ヤフーで「両手禁止」で検索すると35,700件の記事が表示されます。グーグルでは831,000件です。
多くは不動産業者のブログや仲介業者向けのブログですが、感情的な両手禁止反対論から、冷静な議論に変わりつつあります。
コラムの中で、世田谷区役所前で不動産鑑定事務所兼仲介業を営む「アーバンネット・リサーチ(株)」の代表をしている神林勝利氏(不動産鑑定士)の記事が一番分かりやすいので以下に一部をご紹介します。
『 「両手禁止は大手にとって痛手に??」
『 「両手禁止は大手にとって痛手に??」
民主党マニュフェストの「両手取引禁止」の話は、けっこうブログでも書かれてましたね。良く考えたら不動産業全体にマイナスかといえば、そうでもないかもしれませんね。
記事を論評してる方もおられましたが、これは「大手」にとっては痛手が大きいのではないか?と。
つまり、実際私も経験上そうでしたが、専任媒介契約を受けた物件、レインズには登録するんですが、いわゆる「両手狙い」して、2週間前後は「クローズド」しますからね。
S不動産販売さんとか、「確認」の電話をすると、
「世田谷区◎◎3丁目の6,980円の戸建、ありますか?」・・・・「今、お話が入ってます」
「売り止めですか?」・・・・「はい。」
「いつまでですか?」・・・・「来週の週末にはハッキリしますので」
とまあ・・・こんな具合に、ほとんどの場合、「売り止め」「商談中」で紹介してくれません。
ところが・・・
エンドユーザーのフリして電話すると態度が全く違って・・
「ああ、ありますよ~話は何件か入ってますが。良かったらご案内しましょうか?」
って、結局あるじゃないのよ~!?ってパターンが非常に多い!
新しい物件の「デビュー戦」はチラシ一発ツモを狙うなり、オープンハウス(ランド)一発ツモを狙って動いてますからね。当然、宅建協会や流通機構はこうした行為を厳しく禁止しているのですが・・・
この点、民主党が「両手禁止」を実施した場合、大手は「クローズド」する必要がなくなって、市場に物件を出して来ることが予想されます。
我々にとっては逆にメリットがあるのかもしれませんね。 』
不動産業界、特に売買仲介・賃貸仲介の業界は永いあいだ、世間一般から不信の目、猜疑心に満ちた目で見られてきました。
不動産業界、特に売買仲介・賃貸仲介の業界は永いあいだ、世間一般から不信の目、猜疑心に満ちた目で見られてきました。
今回の両手禁止の問題は、仲介業者や仲介業界は「お客様のためにある」「顧客満足」を追求することに生きる道があることを示すいい機会だと考えます。
フェアな競争こそ業界を発展させ、消費者の信頼を獲得する第一歩ということを改めて思いました。
これからも両手禁止の議論の行く末を皆様と一緒に考え、発信していくつもりです。
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