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「日本の不動産は黄金期に突入する!」という題名の本を買って目を通しました。

 

気になる本は全部買うことにしてから20年ぐらいになるでしょうか。特に、「不動産」に関連する本は新聞・雑誌の広告だけでなく、インターネットでも調べて購入するよう心懸けています。

 

この本もネットで見つけて買ったものです。書名からも分かるように、超強気・超楽観論の立場で書かれています。

 

副題として

・・・不動産マーケット大復活、これだけの理由。

・・・世界のマネーは日本の不動産に向かう!

・・・アベノミクスで日本の不動産はこれからすごいことになる!

などなど、証券アナリストらしい超楽観シナリオが並べられていて、読むだけで楽しくなりそうな内容です。

 

私が注目したのは、「TPPが日本の不動産マーケットの仕組みを変える」という項目です。

 

このコラムでも何度も指摘しましたが、わが国の不動産仲介業界には、旧い体質、不透明な部分が多く残されています。

 

TPPは、海外からの不動産「投資」という側面から、不合理な商習慣や不透明な業界体質の改善を迫ることになるという指摘は正鵠を射ています。

 

以下にその要点を紹介します。

 

礼金や更新料などの日本にしかないような慣習は廃止される。

 

◎借地・借家人、テナントに有利な借地借家法が廃止される。

 

◎賃料や売買価格が全面公開される。

・・・その結果として、不動産鑑定士などが有名無実化する。

 

◎不動産仲介業者の「両手仲介」も禁止される。

・・・その過程で、米国並みに、物件情報の一般消費者への全面公開が実現し、「情報の囲い込み」が不可能となる。

 

以上がTPPに関連する事項ですが、著者の大谷洋司氏(ドイツ証券アナリスト)は、これからの不動産仲介業者のあり方として、「近江商人の精神」から学ぶべきだと説いています。

 

つまり、目先の利益を追いかけるのではなく、「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の三方よしの商人道を貫くべきだということです。

 

「三方よし」のビジネスモデルを確立さえすれば、TPPも、外資攻勢も、大手の進出も、何ら恐れる必要はないということでしょう。

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 近江商人の「三方よし」は企業経営の基盤・出発点として、今や世界の共通認識となっているようです。

 

2008年のダボス会議でビル・ゲイツは「創造的資本主義」についてスピーチをしました。

 

その内容は、「売り手よし」・「買い手よし」・「世間よし」、つまり、近江商人が唱えた「三方よし」そのものでした。

 

これを不動産仲介業に当てはめて考えるとどうなるでしょうか。

 

不動産の売買の場合、「売り手よし」「買い手よし」は両立するのでしょうか。

 

この問題を考える際、出発点は、売り主の利益・立場と買い主の利益・立場は「利益相反」であり、大きく違うということです。

 

この立場・利益の違う売り主と買い主の双方の代理人(仲介人)としての役目を果たす仲介業者は「神様」みたいな、公正・無私な役割を期待されるわけです。

 

生身の仲介業者に「神様」の役割を期待することは、出発点からして危なっかしい話です。

 

米国では、大部分の州で禁じられている双方代理・双方仲介が、なぜか、わが国では堂々とまかり通っています。

 

「大手仲介業者」は言うに及ばず、地元有力仲介業者も双方代理・両手数料仲介を目ざしていることは、残念ながら現実です。

 

不動産仲介業者の分かりにくさ、不透明感の大部分は、これが原因だと言っても過言ではありません。世間から不信感をもたれる原因の一つはここにあるわけです。

 

つまり、「三方よし」ではなく、「三方悪し」の典型的な「商法」と言わざるをえません。

 

売り手にとって不利益になる事情を説明します。

 

「某大手仲介業者」が売り主から物件の売却を依頼されたとします。この業者は、自社のお客様だけにこの物件情報を伝えます。

 

売却依頼を受けてから1週間たっても決まらなければ、レインズ(仲介業者の情報共有システム)に登録する義務が生じます。

 

レインズで見た他の仲介業者から問い合わせが入ったとします。答えは決まっています。その物件は「商談中です」という答えです。

 

ところが、同じ物件についてお客様が直接問い合わせをすると、「すぐにでも案内します・・・、ぜひご来店下さい」となるわけです。

 

この場合、売り手は、他の仲介業者の力・ネットワークも活用して、なるべく早く、なるべく高く売却するという「機会」・「利益」を失うことになります。

 

買い手は、物件の良し悪しや、価格の妥当性について、味方になってくれる仲介業者の力を利用する「機会」を失います。売り主側の仲介業者が買い主立場や利益を考えるとは考えられないからです。

 

双方代理・双方仲介は、売り主にとっても買い手にとっても、何ら利益のないことであり、双方仲介をする業者だけが手数料が倍になるオイシイ話になるわけです。

 

「世間よし」を我田引水に強引に解釈して、仲介業者も「世間の一員」だと言い張ってみても、世の中では通用しません。

 

これからは、中古住宅の流通が大きく伸びる時代になりそうです。

 

不動産仲介業者も、本当の意味で「世間よし」と世の中から認められる存在にならなければ、生き残れない時代になったのではないでしょうか。

わが国で宅建業法(宅地宅建物取引業法)が出来たのが昭和26年ですから、61年前です。

  土地の価格が右肩上がりの時代がその頃から約40年続きました。一億、総不動産屋などと云われた時代でもあったわけです。

  宅建主任者の試験に合格するか、有資格者を雇えば、割と簡単に開業できたこともあり、ピーク時の平成3年には全国で(法人・個人)144,064社(人)が不動産仲介業を営んでいました。

   それが、平成25年3月末で122,703業者に減少しています。新規開業者から廃業者を差し引いた業者数ですから、生存競争の激しい業界だといえます。 

   (財)不動産適正取引推進機構の調査では、平成10年から10年間の宅建業者の残存率(生存率)は50%強です。

   ピーク時の全国の宅建業者144,064社(者)のうち現在も営業を続けているのは、比率で30%、実数で4万3,000社程度でしょうか。

  福島市内の宅建業者数でいえば、仲介業の専業業者数は170社余り、20年以上存続している企業は70社余りですから、残存率は41%となり、全国平均と比べて生命力の強い業者が多いといえそうです。

  30年以上営業を続けている業者は48社(残存率28%)ですから、福島市内には仲介業者の「老舗」が多いといえます。 

  帝国データバンクの調査では、不動産仲介業の81.1%は後継者不在となっています。つまり19%しか、後継ぎがいないということです。

  福島市にあてはめて考えると、170社×0.19=32社程しか(身内か役員かは別として)、後継者がいないということになります。

  市内の宅建業者のリストに目を通してみましたが、実感としてはもっと少ない感じです。すでに代替わりしている企業が10社ほどありますから、後継ぎがいないと強く感じるのかもしれません。

  不動産仲介業が社会的に認知(宅建業法の成立)されて60年、30年残存率が30%弱の業界で、大部分が生業・家業の形態に止まっていることを考えれば、当然なのかもしれません。

  業界としても、個別の業者としても、生業・家業のレベルから企業としての将来展望が持てるような組織型態に変えていくことが、これからの課題ではないでしょうか。

  幸い、明海大学不動産学部や九州国際大学法学部が、企業推薦特別枠で後継者養成コースを設けていますので、今後は、不動産仲介業界も変化・進化が期待できそうです。

  当社も、インターネットのフル活用を中心に据えた「ネット不動産の実務研修生」を受け入れています。

  実績としては、3名受け入れて、2名が市内で独立開業して、そこそこの実績のようですが、これからが楽しみです。
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プロフィール
HN:
高橋雄三
性別:
男性
職業:
不動産鑑定士
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